ホセ・ムヒカ氏、N高入学式で魂の祝辞

会場内のLEDビジョンに映し出されたホセ・ムヒカ
 
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「生きることは自由を懸けた戦い」ホセ・ムヒカ氏、N高入学式で魂の祝辞(全文)

以下にムヒカ氏の祝辞全文(和訳)を紹介する。

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若者の皆さん、地球の裏側にある、はるか南の片隅から、お礼を言わせてください。

日本を訪れ、その歴史を垣間見られたことは喜ばしい経験でした。

皆さんは今、人生の門出を迎えています。

覚えていてほしいのは、人間は集団で暮らす社会的動物だということです。

1人では生きられません。

だからこそ人類は文明を築いてきました。

文明は先人の残してくれた最大の遺産です。

教育は私達にヒントを与えてくれます。
 


先人たちが築いた文明や、まいてくれた種を受け取るためのヒントです。

今度は私たちが教育を通じて成熟し、何らかの種を残す番です。

地球の未来と未来の世代のために……。

人生には自らのエゴとの闘いがつきまといます。

自分や大切な人を守るためにエゴは必要ですが、忘れないでください。

人間は社会を必要とし、他者なしでは生きられないということを。

そして覚えていてください。

生きている奇跡こそが最大の幸福だということを。

命は大切に扱い、守らねばなりません。
 


そして、毎日を精一杯生きてください。

痛みや試練を伴ってもなお人生の美しさは褪せません。

生きるということは、転んでは立ち上がり、前に進むことの積み重ねなのです。

生きることは、自由を懸けた闘いでもあります。

フランス革命のような大げさな意味ではありません。

もっと本能的でささやかな自由です。

すなわち人生の一定の時間を好きなことに使う自由です。

この世はビジネスや経済ばかりではありません。

愛情を育むためのゆとりを持つべきです。
 


愛する人や友人のために。

急いで生きる必要はありません。

焦る必要はないのです。

日々、人生の喜びを少しずつ味わってください。

欲に溺れてはいけません。

人は裸で生まれ、裸で死んでいくのですから。

友人や子供たち、大切な仲間のために。

なぜなら、愛のない人生など無意味だからです。

一方で、私たちは市場に圧迫されています。

市場は次々と物を買うよう私たちを駆り立てます。

そして時間を奪います。

皆さんが払うのはお金ではありません。

あなたの人生の貴重な時間です。

その代金を稼ぐために費やした時間なのです。

ですから、分別と節度を持ち、無駄遣いをしないでください。

そうすれば人生の自由な時間を失わずに済みます。

古代ギリシャの格言にもあります。

紀元前6世紀頃の言葉です。

“過剰の中の無“(多くを求めるな)

歴史は多くのヒントを与えてくれます。

日本の歴史にも、振り返り立ち戻るべき教訓があるはずです。

古来より続く皆さんの国には、たくさんの知恵と独自の歴史があるからです。

厄介なことに、人間というのは口で言われてもなかなか学びません。

実際に経験して、ようやく学ぶものなのです。

日本はとても現代的で技術の発達した国です。

でもロボットには、人間のような感情はありません。

だからこそ、学校生活や今の時間を有意義に過ごしてください。

大切なのは学び方を学ぶことです。

年齢を重ねるにつれ、多くのことを学びます。

でも、その度に悟るのです。

どんなに学んでも学び足りないと。

一生のうちに学べることは限られています。

あいにく、人間の命には限りがありますが、愛に限界はありません。

ですから、世の中に広めていきたいのです。

人間の能力は巨大なビルを建てたり、月に行ったり、深い海の底に潜ったり、遺伝子を操作することだけはないのだと。

自覚を持ち、助け合えば、世界は変えられます。

たとえどんな困難があろうとも、よりよい世界を築けるのです。

憎しみや戦争のない世界を。

そのためには、世界から過酷な貧困を取り除くこと。

そして、浪費をやめることです。

これらの問題は、人間が足ることを知らず、無駄遣いを繰り返した結果です。

世界では1分当たり200万ドルもの大金が軍事費につぎ込まれています。

それなのに、資金がないと言ってアフリカの飢餓は放置している。

人類発祥の地であるアフリカを見捨てるなど、恥ずべき振る舞いです。

皆さん、勉学に励み、その知識を人類のために役立ててください。

自分だけでなく、みんなのために。

南の大地より、感謝とハグを。